「OK!生きまくっちゃえ」という未来形の愛

道重さゆみ的ライナーノーツ①『OK!生きまくっちゃえ』


「OK!生きまくっちゃえ」道重さゆみ
作詞 大森靖子 作曲 K2-Dee

常軌を逸した幸福の階段を駆け上る行進曲。
眩しく暴力的な程にポジティブなのに傷つけられることなく素直に信じられる不思議な明るさを持っている。それは道重さんの持つアイドルとしての普遍的な輝きを描いているからではないかと思う。


私見だが、道重さんという方は底抜けに明るいタイプではなく、表出するポジティブも何周もまわったもので、だからこそこの爆発的輝きが嘘くさくなく説得力を持って放てるのだろうと思う。MVはその輝きが混じり気なしの純度5億%で表現されていて胸が締め付けられて我執が消える。

「私から私(アタシ)まで私(ワタクシ)じゅう 私だらけもう宇宙じゃん」
という歌詞では永遠に増殖する道重さん、道重さんの宇宙が目の前に現れる。
人を好きになる時、人はまさにそういう感覚に陥る。頭がその人でいっぱいになり、それ以外考えられなくなる。その情景を端的にこの歌詞は描写している。
また、手数が多い、と大森さんは道重さんを評していたことがあるけれど
好きになってもらうためにあらゆる方法で物理的に自分の数を増やし好きという状態を作り出す手法を取れる人であったように思う。その様も思い起こされる。
しかもその後
「まだとびきりの秘密あるんだけどな」
と続く。
手数を増やし質を高めても、全てを見せるわけではない。未知によってより引き付けれて離れられなくなる。
この一連の歌詞は人が道重さんのファンになってしまう過程そのものだ。

このように全体として道重さんのささやかな日常や言動を入り口として、魅了されて好きになり、その好意が道重さんに受け入れられて喜ばれるという、ファンと道重さんとの淡い初恋のようなかけがえのない幸福なやり取りが曲中に溢れている。

だからMVがまるで道重さんとデートしているかのような映像であることはとても適切であると感じる。忘れられない女性との海外での幻のデートみたいなときめきを道重さんを好きになると体験できるというメッセージが全体を貫いている。曲もMVもひたすらにその幸福な光の眩しさを聴き手に伝えてくれる。
そこに残酷な結論はない。

「いつでも 愛しても愛しても愛されたい
愛されて愛されて 愛したい
一回のやりとりじゃ満足しない
確かめ合うとかじゃなくて
膨らんでる!キマってく!
まだとびきりの未来あるはずだよな」

と未来形でそのやり取りはずっと続いていく。

道重さんの活動とともにこの曲自体もずっと未来形で進化していくのだろうと思うと計り知れない。

その可能性含めとても大好きな曲です。