フィクション

海中生物

その子はどこまでも綺麗なことしか言わないので理解ができなくて、それが面白くて私は側を離れることができない。
作り物みたいな色素薄めの眼球と押したら凹んで戻らなくなりそうな少し湿った頼りない皮膚。
もしかして元々海中生物だったのではないかな。
海中生物の話す事や感情のリズムは人間である私には当然のごとく理解ができなくて心地よい。だから飽きない。
透明になることが理想と語るその子はすでに半透明で光に透けるととても美しい。
その半透明な皮膚がグロテスクに濁る時、より一層美しいので、つい強く握りしめて跡をつけてしまう。

潔癖と完璧

潔癖なあの子は完璧を勘違い
0と100を勘違い
そんなあの子も可愛いが
潔癖じゃないけど完璧な
あの人が1番可愛い

陰影記録

徘徊老人の独り言≒おばあさんのハンズフリー通話
おじいさんのメトロノームのような自転車のベル
温かいレンガ造りのヤクザの家の監視カメラの駆動音
町中の病人を乗せ中央病院にあつまる救急車のサイレン
頭上を攻め行く旅客機の轟音
人工河川敷を走る野性を持て余したビジネスマンの足音

それら全てを
くっきり映すLEDライトの陰影