道重一筋Tシャツと大森靖子さんの意識高いT

意識高いTのお話をいただいた時真っ先に頭に浮かんだのが道重さゆみさんの「道重一筋」Tシャツでした。

あのTシャツは革命的でした。

なぜなら、ただの生誕記念Tシャツというものをファンに忠誠を誓わせる、極端に言ってしまえば、脅迫状としてはっきりと定義したからです。

それはいわばTシャツという価値観の更新でした。

「道重一筋」Tシャツはコンセプトだけでなく、デザインも秀逸でした。

メンバーオリジナルデザインというと当時は可愛らしいイラストみたいなものが多かったと思います。もしくは年齢の数字など。その中での文字、日本語、しかも漢字4文字という斬新さです。

文字をドーンと配置するだけでも攻撃的なのに、普段はあんなに可愛さにこだわっているのに、微塵も可愛くない、意志を表明させるのにこれ以上適したものはないような、真っ黒な太い毛筆体。まるで書き初めのようです。書き初めは一年の抱負を誓うための儀式です。そんな古風な儀式をアイドルの生誕Tシャツに採用したせいで起こる激しすぎるコントラスト。本人の見た目の可愛さとTシャツのピンク色とのギャップも含め、センスの塊です。

道重さんはアイドルの生誕Tシャツの意義を単なる記念Tシャツから忠誠を誓わせる脅迫状へ変えたのです。

真のデザインとはこういうものだとさえ思いました。

もちろん道重一筋Tシャツ以前のアイドルTシャツにもそういう誓約書的な意味はあったのだと思います。私が知らないだけで。そもそもメンバーカラーがあり、着るTシャツの色で推しメンを周囲やアイドル本人にアピールする気持ちは、ファンの方たち自身にもかなり前からあった意識だったと思います。

ですがこれほどはっきりとその宣言したい、宣言させたい、という欲望と機能を満たし、先鋭化したTシャツを私は当時初めて見ました。

この出来事は、Tシャツ、服を着るということは思想を着るということなのだ、と再認識させられた大きな出来事でした。そしてその時からさゆヲタにとってTシャツというツールは特別なものになっていきました。

なので、大森さんのライブに行き始めた頃、会場で初めて初代の意識高いTを見た時、そのビビッドなデザインに、これは道重一筋Tの大森さんバージョンなのだ、と直観しました。

さすがさゆヲタの大森さん、Tシャツというツールに意識的だ、と。

しかも文字ネタではなく、大きめの自分の顔写真(しかも派手)、という道重さんとは別のやり口で、着るファンに負荷をかけているのがさらに素晴らしいと思いました。

そんな中での意識高いTのお仕事のお話でした。

感激とともに、瞬時に心に嵐が吹き荒れました。

「さゆヲタとして、さゆヲタの大森さんヲタとして、生ぬるいTシャツを作るわけにはいかない。デザインとTシャツが分離したものを作るわけにはいかない。Tシャツに何か別の機能と価値を与え、インパクトを与えるものでなくてはいけない。」

というひとりよがりな使命感が押し寄せました。

今思えば、あまりに煮えたぎりすぎて最初のプランのラフはあまり良い出来ではなかったと思います。しかし大森さんは二つ返事でGOサインをくれました。

大森さんは編曲を依頼する際にも、この人ならこういう風にできるとわかるから、細かいことはあまり言わないと言っていましたが、それは選んだ以上四の五の言わず相手に任せるという覚悟と愛があるからできる事なのだと思います。だから私のプランにも、もしかしたら不安を感じつつも、何も言わず最後まで見守ってくれたのだなと思いました。(違うかもしれませんが…)

そんな経緯で制作したTシャツだったので、意識高いT2016に触れたり考えたり買ったり着たりしてくださった方々がいてくださることを毎日感謝してやみません。自作の意識高いTPVとか自撮りとか顔ハメとか欲しいとか可愛いとか言って頂いたり実際に着ている方を見るたびに胸がつまります。

そしてそんな機会をくださった大森靖子さん、制作スタッフの方々に改めてお礼を言いたいです。本当に本当に本当にありがとうございました。

ツアーファイナルZEPP東京、一人でも多くの方が会場に行き、気が向いて意識高いTを手に取ってくださることを願って…。